歩粉と歩粉の本「朝食おやつ」

2015.03.01

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「歩く粉と書いてhocoと読みます。
粉の持つ滋味と季節の素材を楽しめる
デザートのお店です。
ゆったりとした時間ごと味わいにいらしてください。」

歩粉の磯谷仁美さんが、2006年に手作りのデザートだけのカフェをスタートする時に
作ったショップカードに添えたことばです。
通販のみの時代を含めると10年、お店スタートからは8年の月日を重ね、
遠くから近くからのお客様に愛され続けた歩粉のお店が、
美味しい季節のデザートを作り届け続けてくれたカフェが、
去る2015年2月22日をもって閉店しました。

長く続いた恵比寿の地での営業の幕を閉じた訳ですが、
まだ何だか実感が湧かず、ただただボワーンとしてしまう。
それは、歩粉をずっと続けてきた磯谷さん自身が、
もっともっとリアルに、心根で感じていることだ思うので、
他所の者がどうこういうのはおこがましいとは承知しているのだけれど。
歩粉はずっとずっと東京・恵比寿で続いていくのだ、
いつもあの工房の中でお菓子を作り続けているんだろう、と信じ込んでいたあまりに、
不動産事情による閉店が悔しくて悲しくって、、、
正直、まだ未練たらたらであります。

歩粉の店主であり、菓子職人である磯谷仁美さんと出会ったのは、
drop aroundがドロップアラウンドと名乗って活動を始める前のこと。
歩粉という屋号でお菓子屋さんをはじめる前、
磯谷さんはご実家の大阪で家族と共にBWAというごはん屋さんを営んでいました。
そのBWAのごはんが美味しくって、滋味深くって。
他に用事がない、住宅街の片隅にあるBWA目当てで何度かその街に通いました。

その後、dropが活動をスタートした大阪を離れ、東京に製作拠点を移した直後に、
改めて友人を介してデザイナーとして紹介頂いたのがご縁となって、
いよいよ独立してお菓子屋さんをやろうと思っている、、と話す彼女と、
歩粉の屋号やロゴを一緒に考えたり、webでの通販の仕組みから模索したり、という
drop around一番はじめのクライアントさんとも言える長いおつきあい。
そのぶん思い入れも多く、閉店する決意を電話で受け取った際は
目の前が真っ暗になるくらいショックだったのですが、
仁美さんは悩み抜いた末に心を決めて、既にその先を見据えているのが伝わってきたので、
それならば晴れ晴れと閉店を見送れたら、、と思い、
その場で閉店前に会いにいくことを決めました。

閉店前に訪れた歩粉のお店は、
歩粉のことを大事に思い駆けつけるお客さんで連日にぎわっていて、
なにより変わらずどのデザートも看板焼き菓子のスコーンもしみじみ美味しく、
いつも歩粉にいく度に感じる満ち足りた気持ちを最後まで味わえて嬉しかった。
しっかりと「いつもの歩粉の味」を噛み締めて、帰ってきました。
仁美さんのお菓子は、素材の良さを損なわずに、
手間と時間をかけた真っすぐでひたむきな味がします。
どんなに自分が疲れていても、それを顔には出さずにこつこつつくり続けて、
毎日お客さまを笑顔でお迎えしていた。
深夜まで工房で仕込みをして、月変わりのメニューをいろいろ試作して、、、
口で言うのは簡単だけれど、それを8年も続けていたのだからその底力たるや。
尊敬と感謝が尽きません。

ご本人も閉店のメッセージの中で語っているように、
開店当初は「私にはこれ(お菓子づくり)しかないから、レシピを披露したり、よそに出すこともあんまり考えられへんなあ」と困り顔で話していて、
開店後すぐに大人気店になって出版社からのオファーも引く手数多であったにも関わらず、とにかくお店で提供するデザートをつくることに集中していた仁美さん。
歩粉を長く続けるうちに、そして震災や自身の心境の変化を経て、
だんだんと美味しいお菓子をつくり続けたい、に加えて、
誰かに喜んでもらえることを大事にしたい、と考えも変わってきたそうで、
この2年半で焼き菓子の本、朝食の本と2冊のレシピブックも出版されました。

歩粉の味、仁美さんの苦労や菓子職人としての凄さを知っている者としては、
あの味を再現することの難しさもわかりすぎるだけに、
なかなかレシピを前にしてもおいそれとはすべてを真似出来ないけれど、それでも、
今となっては歩粉のデザートが、いろんな家庭で台所で再現されるのは、
ファンとしても嬉しく、豊かなことだなあと有り難く思います。

閉店後、お店の片付けやら引っ越しの準備などでものすごく忙しいのに、
1冊1冊メッセージとサインを入れた「朝食おやつ」の本をM&Wに送ってくれました。
「朝食おやつ」を見ながら、dropも毎日のように、
クイックパンやグラノーラをこさえてますよ(今日の朝ごパンもこのレシピ!)。
時間がないなりに、美味しくてほっとする朝ごはんをつくりたいお家にぴったりの本。
おいしくって頼もしい、とてもいい本です。
M&Wでも販売しておりますので(しかもサイン入ですよーーー!)、
ぜひお手に取ってご覧くださいね。

写真は、閉店後の歩粉にて。あの空間のすべてが大好きでした。
開店前日まで天井とか一緒に塗ったのもなつかしいやら泣けるやら、、、。
今後の歩粉の活動、発信されるお菓子の数々も楽しみです。

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